コンセプトが大事だよね。
この仕事をしているとよく、自分でもクチにしたり、仕事相手やチーム内でも発される言葉です。
「コンセプト」と一言で言ってしまうと、たった5文字。
しかし、この5文字の中にどれだけの想いがつまっているのかは、なかなか伝わりにくいものだと思います。
実際、企業やプロダクトの新規開発の中では「コンセプト」は、企業の営業戦略、経営戦略、企業理念に結びつく1番重要な部分です。生活の中で、身近なアプリやゲーム、CM、家電製品、食品などにも何かしら込められているものなのです。
例えば、ハッカソンの時間の中では時間が短いのでアイデアの段階でほぼ決定し、じっくり練り続けることはあまりないのですが、その短時間だとしても最終プレゼンの中では非常に重要なキーワードになります。新しく世界に送り出す商品やサービスには、
- ターゲット(老人、子供、30代男性、高校生、日頃◯◯をしている人 等)
- それによって何ができるか、何がおきるか(ユーザーはどう使うのか)
- それは何故なのか(他との違いなど)
- 起承転結
- 5W1H(Who・What・When・Where・Why・How)
くらいは、考えるフェーズが必ずうまれてくるはずです。
ものを作り出す時に、それが自然に決まりコンセプトになっていくのです。
- 覚えやすいのか?
- わかりやすいのか?
そこを重視してコンセプトを理解できるよう相手へ伝えることで、自分の考えたものや、これから生み出すものへの理解度も深まります。コンセプトをカタチにしていくのがデザイナーのお仕事でもあるのですが、その前に、デザイナーとしてはそのコンセプトをよく理解し噛み砕く必要があります。
コンセプトをカタチに
デザイナーがコンセプトを理解し、わかりやすいカタチにするものといえば、「ロゴ」です。 「ロゴ」は、コンセプトやテーマをいかに反映させるかで成り立ってくるものです。
調べたら、そんな想いがあるとは知らなかった!というコンセプトがたくさんあるのですが、色やカタチによってそれが表現されており、自然に受け入れられているロゴが日常にあふれています。例として、いくつかご紹介します。
amazon
矢印が「a」から「z」に伸びており、アマゾンには、「A」から「Z」、つまり全ての商品が揃っている事を意味していると同時に「顧客の満足を表す笑顔」が表現されている。
日々、大変重宝しているのがAmazon。ちょっと欲しいものがあるとついつい商品検索します。
こんなコンセプトを知って、ニッコリしてるクチと矢印兼ねてたのか!と思ったり、確かにいつ検索しても商品がみつかるしすぐ買えて満足してるなーと納得した人もいるのではないでしょうか?
Meiji
【書体】 ふくよかでやわらかな書体、親しみのある小文字を使用することによって、「食と健康」の企業グループらしい明るさと、お客様一人ひとりとのあたたかいつながりを表現しました。「iji」の造形には、人々が寄り添い支えあう姿を託しています。
【色】 躍動感や生命の喜びを感じさせる色であり、人が生まれて最初に知る色でもあります。赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる世代の人びとのそばにあって、愛され続ける存在でありたいという思いを表現しました。
iとjは人が寄り添い支えあってるのを表現してたんですね。以前のロゴと比べると、すごく優しいイメージになりました。
YAMAHA
ヤマハ株式会社の前身である「日本楽器製造株式会社」設立の翌1898年に、社章として「音叉」が、商標として「音叉をくわえた鳳凰図」が定められました。以来、ヤマハの成長とともに、さまざまな「音叉マーク」を経て1967年に統一されました。
3本の音叉でヤマハの「技術」「製造」「販売」の3部門の強い協力体制を表すとともに、音叉に象徴される音・音楽を中心に世界(外円)にのびゆくヤマハのたくましい生命力を表しています。また、音楽の基本である「メロディー」「ハーモニー」「リズム」の調和という意味もこめられています。
あのマークは、オンサだったんですね。
楽器だけでなく、バイクなどで見かけるYAMAHAロゴですが、バイクに入ってる「YAMAHA」の違いは「M」の真ん中が下まであるかないかが違いだそうです。
音系でいえば、ビクターの犬のロゴマークも長年使われ続けています。
jig.jp
私の地元にある、jigtwiやオタマートというスマホアプリで有名な会社「jig.jp」です。そのロゴはシンプルでドットでできた飽きのこないものですが、開発するエンジニア独特の個性や面白みが現れていると思います。
jig.jpという会社名は、アイルランドの高速なテンポが特徴の伝統のステップダンス”jig”と、ものづくりのための道具”治具”に、日本発世界へ、ユニークなものを発信という意味を込めて、jpドメインを取得し、ドメイン名そのままを英文登記しています。
短い名前に合わせて、シンプルなロゴをということで、友人つくってもらったロゴ案を元に、Windowsの大好きなツール、ペイントを使って徹底的にそぎ落としたものがこのロゴです。
10周年の時に、なんとこのロゴが長方形のひとカタマリにおさまるという面白い新発見がありました。
参考:福野泰介の一日一創「jig.jpロゴに隠されたひみつ」
長年ある企業ロゴのコンセプトの考え方は、とても参考になります。
ロゴを見て、瞬時に込められたコンセプトを全部読み取ることはできませんが、いろんな想いがこもっているものなので、調べてみると色んな発見があります。これから出会う人の会社のロゴに関しても「なぜこのロゴなんですか?」という質問を投げてもいいかもしれません。
コンセプトを超えたこだわり
SONYのロゴと聞いて、「SONY」の4文字をすぐ思い出せます。
ずっと「SONY」の4文字なのですが、実は少しずつ変化しています。企業のブランドが大きくなるにつれ、時代に合わせて少しづつ変化していってはいるものの、大きな変化はしていません。人の目にふれる「SONYブランド」を表すロゴを、徹底してこだわって貫いてきています。
参考:「SONYブランド」の出発
「自由闊達」の流れを汲み、小さくても、はつらつとしたやんちゃ坊主という語源。「電機」など特定の事業の意味を含まず、創業者の名前にも縁はない。
「文字だけじゃん?」と思う人も少なくないと思いますが、SONYの商品が個人的に好きなので、このシンプルかつ製品のイメージやカタチの邪魔をしないロゴが、奥深いなと思っています。
何十年もの月日をかけて変わらないロゴがある。=コンセプトをずっと持ち続け、ブレていない象徴になってっています。コンセプトは、ものづくりをしつづける限り持ち続けていないといけないのだと再認識しました。
最後に
今年、ロゴの話題といえば東京オリピックのエンブレムに関して大きなニュースになりました。デザイナーだけでなく、いろんな人たちにも興味をもたれた出来事でした。毎日ニュースを見て、デザイナーがロゴを作るという意味をすごく考えさせられました。
ただの見た目を言えば、「パクリじゃない?」というデザインは沢山でてくると思います。Googleの画像検索をすれば、同じようなデザインはいくらでも発見できる時代です。 東京オリンピックという大きなものだからこそ、余計に注目されたり粗探しされてしまう出来事だったのかもしれません。
しかし、もう一歩踏み入れて「コンセプト」までを受け入れて見ると、もっと違う見方ができた人もいたのでは?と思います。
1964年の東京オリンピックのエンブレム。
当時、デザインを担当したのは日本のデザイナー亀倉雄策氏ですが、現在でも通用するという声があがりました。あの東京オリンピックのエンブレムは、海外からみた日本や、日本人のもつ日本のイメージ、世界に出すわかりやすさやインパクトが、あのシンプルな中にすべて感じれたものだったからかもしれないなと感じました。
ロゴデザインをするデザイナーは、そこにコンセプトを取り入れた経緯をわかりやすく伝える力量が必要という事を痛感しました。
どんな人でも、見た目を見るだけではなく、どんな意味やコンセプトがあるのかを紐解いて、生活の中の身近なアプリやゲーム、CM、家電製品、食品などを見ると、そのモノに対する印象が変わるかもしれません。最近ではクラウドソーシングで手軽に安くというのが流行りですが、いちデザイナーとして、こだわりぬいたコンセプトを色んな人に知ってもらえて、ずっと使っていけるものを作り出すという工程は、大事にしていきたいと考えています。